歴史マニアのための魏晋南北朝史~歴史の真髄〜

三国時代から西晋、八王の乱、永嘉の乱、そして東晋と五胡の時代へ。

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魏晋の録尚書事について

魏晋期によく見られるのがこの
「録尚書事」という役職だ。

これに任じられると権力のトップに位置づけられる。

この録尚書事というのは、
尚書(漢の武帝のときに新設)を管理する。

尚書とは皇帝への上奏を取り扱う。

録尚書事の「録」は元々「領」であり、
「尚書」の「事」を「録(領)」する
という意味だ。

つまり録尚書事を通さなければ、
皇帝へ上奏ができない。
録尚書事でなければ皇帝権へアクセスできない。
こういうと、秦始皇帝のときの宦官趙高を思い出す。

言い方は悪いが、
皇帝に上奏を上げるか上げないかは、
この録尚書事次第となる。
皇帝の意向ということで上奏を握りつぶすことも
騙ることもできる。
非常に大きな権限を握っている。

魏王朝は、
皇太后、皇族、外戚、宦官のいずれも曹丕の意向で、
権力を握ることはできなかった。
魏文帝曹丕の時代の録尚書事は、
陳羣と司馬懿である。
曹丕の臨終の際に、共に遺詔を受けた、
曹真・曹休は、それぞれ関中と揚州に駐屯していた大将軍だったが、
上奏は、この録尚書事を通さないとできなかった。

だから、曹丕の治世では、曹真・曹休ではなく、
陳羣と司馬懿がトップであった。
三公(司徒・司空・大尉)ですら、録尚書事を通さないと皇帝に上奏できなかった。

曹丕の治世で皇帝の親政・側近政治はすでに始まっていた。
曹叡からではなかった。

※なお、この尚書と対になるのが中書である。
皇帝の詔勅を立案・起草する。
時代によって、役割・位置づけが異なる。
詳細は省く。これも漢の武帝の時に新設された。