歴史マニアのための魏晋南北朝史~歴史の真髄〜中国史・日本史全般拡大中

三国時代から西晋、八王の乱、永嘉の乱、そして東晋と五胡の時代へ。

bitFlyer ビットコインを始めるなら安心・安全な取引所で

東晋北伐⑱桓温、満を持しての369年第三次北伐

 

 

●桓温の強み

 

桓温の強みは、

とにもかくにも思いっきりの良さなのである。

悪い言い方をすると、「はったり」がうまいのである。

 

軍事行動にもそれが表れている。

基本戦略は電撃戦だ。

 

父の仇討ちをした思いっ切りの良さで

人心を手に入れ、皇帝の娘(公主)を娶る栄誉に預かる。

 

その後は、成漢制圧、長安包囲、洛陽陥落と、

その行動は正に勇敢である。

 

桓温はこれで生きてきた。勝ち抜いてきた。

やはり桓温はこの成功パターンで、

人生の大勝負、前燕攻撃を行おうとする。

当然である。

 

●枋頭は古来より黄河の重要な渡河地点

 

そしていよいよ、

中華、中原を支配する前燕をターゲットとする、

第三次北伐へと動く。

 

桓温の第三次北伐は、

枋頭の戦い(ほうとうのたたかい)とも言う。

 

この枋頭というのは地名であるが、

この枋頭で戦いがあったというよりは、

ここを中心とした戦役があったというのが実態である。

 

この枋頭だが、

古の呼び名は滑である。

 

春秋時代においては、

秦の穆公が晋の文公の死去に乗じて、

遠く滑へ攻め入っている。

 

この滑は、

古くからの黄河渡河地点である。

 

晋の文公がいわゆる覇者となったため、

晋がこの滑を管理していた。

 

この滑は黄河の渡河地点であり、

南北を結びつける場所である。

結節点である。

 

これを管理することが中華の支配者としての条件である。

 

秦の穆公がここを取りに行こうとしたのは、

滑を押さえて、晋の文公亡き後の中華の支配権を握ろうとしたのである。

 

しかしそう簡単には行かず、その帰路、陝(のちの弘農。三門峡市)の

殽にて、晋の襄公と戦い、敗北する。

 

桓温がこの滑、枋頭を巡って戦った、

この枋頭の戦いというのは、

桓温が中華の支配権を巡って前燕と争ったという意味合いが

隠されているのである。

 

●桓温、四度目の電撃戦

 

さて、桓温はどうしたか。

 

成漢討伐、長安包囲、洛陽攻略に続く、

四度目の、やはり電撃戦を行う。


今回の電撃戦は、

下邳から一挙に北上。

黄河に入り、黄河を逆行して、

枋頭の北へ侵入することだった。

 

前燕帝都鄴の目の前に突如現れるのである。

 

敵の本拠地にいきなり突っ込むこの作戦は

かなり勇気のいる奇抜なものである。


しかし桓温はこの奇抜さ、意外さで、

いわばハッタリをかまして、勝ってきたのである。

東晋、いや当時の保守的な漢人の中で、

このようなことができるのは、桓温ただ一人であったに違いない。

 

●桓温、寡兵で勝つためにハッタリをかます。

 

 

桓温は知恵を振り絞ってこの作戦を考えたはずだ。

 

前燕は慕容恪が死んでから、

内部がまとまっていない。

 

このような奇抜な戦術を用いれば、

今までのように動揺し、内部から崩壊するはずだ。

 

桓温はこのように考えたはずだ。

 

事実、前燕の執政慕容評は動揺した。

 

慕容評はまだ戦ってもいないのに、

洛陽盆地割譲の見返りに前秦苻堅に援軍を要請したのである。

 

桓温の目論見通りに、

前燕は動揺した。はずだった。


●桓温奇襲の中、ただ一人冷静な前燕の宗族慕容垂

 

しかしながら、

狼狽する前燕の中で一人動揺しなかった者がいた。

 

慕容垂である。

 

慕容垂は、叔父慕容評と対立していた。

 

慕容評が慕容垂を活用できなかったためである。

 

慕容垂は当然慕容評のすることなすことを批判的に見る。

 

慕容評は狼狽しており、

早々に前秦に助けを求めた。

 

当然慕容垂は、

桓温の情勢を見て、手立てはないか考える。

慕容垂は兄慕容恪に認められた武人であり、

また匈奴の血を継いでいる。

 

匈奴の血を継いでいるということは、

匈奴流、異民族流の、騎兵主体の遊撃戦ができるというわけだ。

 

そもそも、

匈奴以来の異民族のベーシックな戦い方は、

騎兵でまず先陣を切って攻撃、

敵を誘い込み、撤退するというものである。

 

後方には伏兵を潜ませ、

先陣の兵たちはそこまで敵を引きつけながら撤退。

 

伏兵が一挙に起って、

総攻撃するというものだ。

これで、前漢の初期、

匈奴の冒頓単于は前漢高祖劉邦を捕虜寸前まで追いつめている。

 

慕容垂はこの戦法を当然知っていたはずだ。

 

桓温のこの電撃戦は、

匈奴の戦い方とは違うとはいえ、

何か似たものを感じたはずである。

 

だからこそ慕容垂は冷静だった。


この戦法に対して、

どう対処するか。

 

相手の意図がわかるから、

冷静に考えれば、

慕容垂は対処できるのである。

慕容垂は、冷静に

桓温の裏を突く。


退路を断ち、

桓温の東晋軍を敗退させる。

 

●参考図書:

 

 

中国史〈2〉―三国~唐 (世界歴史大系)

中国史〈2〉―三国~唐 (世界歴史大系)

  • 作者: 松丸道雄,斯波義信,浜下武志,池田温,神田信夫
  • 出版社/メーカー: 山川出版社
  • 発売日: 1996/08/01
  • メディア: 単行本
  • クリック: 1回
  • この商品を含むブログを見る
 

 

 

魏晋南北朝 (講談社学術文庫)

魏晋南北朝 (講談社学術文庫)

 

 

 

中華の崩壊と拡大(魏晋南北朝)

中華の崩壊と拡大(魏晋南北朝)