歴史マニアのための魏晋南北朝史~歴史の真髄〜

三国時代から西晋、八王の乱、永嘉の乱、そして東晋と五胡の時代へ。

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参合陂の場所について。

※内モンゴル涼城県の東北、つまり今の岱海周辺という

説もあるが、ここでは陽高県の説をとっている。

岱海近辺であれば、フフホトとウランチャブの間ということになる。

 

参合陂の場所について。

結論、これは≒白登山である。

 

 

参合陂の戦いは、

五胡十六国時代の北側の時代に区切りをつけた非常に重要な戦いである。

五胡十六国時代がマイナーということもあるが、

この戦いすらも知名度が低い。

 

しかし、参合陂の戦いは非常に重要な戦いである。

淝水の戦い以後にようやく慕容垂が華北の覇権を掌中に収めようとするところに、

北魏の拓跋珪に足をすくわれるのだ。

 

慕容垂はあと一歩で華北の覇者になろうとするところを

その機会を掴もうとする瞬間、その手からこぼれ落ちてしまうのである。

 

慕容垂率いる鮮卑慕容部は参合陂の戦い後、

慕容垂の死をきっかけに分裂。そして滅亡する。

一方、北魏は参合陂の勝利により華北の覇者への道を駆け上がる。

 

 ●参合陂はどこなのか。

 

参合陂、参合陂と言うがその場所は一体どこなのか。

 

結論、参合陂≒白登山、である。

 

現在の大同市の中心部の北東に白登山がある。

 

これは前漢高祖劉邦と匈奴冒頓単于が

戦った場所である。

 

冒頓単于が劉邦を包囲した、

因縁の地だ。

 

 

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中華文明統一の英雄、劉邦がここでこのような屈辱的な思いをしなければ、

中華正統史観とか、こちらは漢民族であちらは異民族だとかいう

話にはならなかった、いわくつきの場所である。

 

この白登山の北東の山麓に、

現在陽高県と呼ばれる場所がある。

 

ここが参合陂である。

 

●戦略的要地、参合陂。

 

ちょうど、

後燕の帝都中山(河北省定県。保定市近辺)と、

北魏の本拠地盛楽(フフホト)の中間点にある。

 

後燕の中山から見ると、

ここ陽高県の先が隘路になっている。

 

ここを抜けると大同市に辿り着く。

 

この隘路を通り抜けないと、

代、そしてその中心地平城、現在の大同市に侵入できない。

 

後燕軍も撤退するには、

この隘路を通らなければいけない。

8万人の大軍がここで行軍が滞るのは必定である。

 

●「陂」の意味。

 

石勒が立ち往生した「葛陂」、

寿春を肥沃な地にした「芍陂」、

そして今回の参合陂。

 

「陂」とはどういう意味か。

 

これは、堤とか坂とかいう意味である。

当時ここに、「参合陂」という堤があって、溜池があったのだ。

 

代の方が標高が高いので、

中山からむかうと上り坂になる。

撤退するときに下り坂になるが、

これは追う拓跋珪率いる北魏軍にとっても同様である。

 

下り坂をひたすら駆け下る。

 

一方の後燕軍は、

隘路のため、縦列になって通行しなければならない。

 

ここで北魏拓跋珪は慕容宝の後燕軍を捕捉したのである。

 

参合陂というそもそもの地名の意味は、

「参じ合わせる場所」というものだと思われる。

 

東に行くにも西に行くにも、ここが隘路なので、

エリアが変わる。旅立ちの時にはここが出発場所で、

ちょうど待合せるのに適している坂だったのだろう。

 

 

●文明の境界線、参合陂。

 

北方異民族にとってはここ代が中華への侵入ルートして

最も使いやすい。

また、

農耕と牧畜の文明の境界線である。

 

そのため、実はこの代は頻繁に係争地となる。

 

中華の覇者と異民族の覇者が正面衝突する場所なのである。

 

農耕文明と遊牧文明が衝突する地点と言ってもいい。

 

参合陂の戦いは異民族同士の戦いだが、

後燕は既に中華の国家であった。

 

出身は塞外の遼東だが、

慕容儁の時に中華に進出してから、

既に40年超である。

 

異民族出身というルーツを持つ中華国家、

これが後燕である。

 

 

それが北魏という代よりもさらに

北の陰山山脈南麓に本拠を持つ国家に敗れたのである。

※古の匈奴は、この陰山山脈南麓を右へ左へ移動して生活をしていた。

 

参合陂の戦いは例によって、

農耕文明と遊牧文明の衝突であった。

 

そして、また遊牧文明が勝ったのである。

 

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