歴史マニアのための魏晋南北朝史~歴史の真髄〜

三国時代から西晋、八王の乱、永嘉の乱、そして東晋と五胡の時代へ。

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理想の皇帝が煙たがられて、司馬炎という名族皇帝が誕生する。【皇帝の存在価値①】

 ※dorontaさんのコメントで着想を得ました。感謝いたします。

 

中華皇帝の価値は時代によって変容する。

 

皇帝の存在が理想的な時代から、

煙たがられるまでについてここでは述べたい。

 

●とてつもなく素晴らしかった皇帝制度

 

秦の始皇帝から前漢高祖劉邦にかけて、

中華は皇帝と言う存在なしには成立し得なくなる。

これは、

皇帝を頂点とした国家体制が途轍もなく素晴らしかったからである。

あまりの完成度にこれ以外が考えられなくなるのである。

 

中華皇帝という制度は、

清の宣統帝が退位する1912年まで、約2100年間続いたことからも

それは感じ取れる。

 

●農民のリーダーとしての前漢皇帝

 

しかしながら、時代によって皇帝のあるべき姿は変わる。

秦の始皇帝、前漢高祖劉邦、後漢光武帝あたりまでは、

皇帝というのは、

農民を統率するリーダー。

 

どこぞの地域が飢饉に陥れば、

皇帝が守る、このような恩恵を与えてくれるのが皇帝だ、

ぐらいの存在。

まさに徳のある理想的なリーダーといったところである。

救世主でもある。

 

●複層化する社会の中で力を落としていく後漢皇帝

 

これは後漢中期以後変わっていく。

社会構造が徐々に複雑化していくからである。

一つの大きな事例としては、

皇帝以外の、

各地を収めている諸侯自身が力を持つようになっていく。

 

清流派官僚というのが、

濁流と言われる、

皇帝直下の宦官と対立するが、彼ら官僚だって

地元のリーダー、事実上の諸侯である

 

私有地を持っていたり、私兵を抱えている。

自身でまともに農作業をしているわけでは全くない。

諸侯という言葉は時代によって、

名族、貴族だったり変わっていきますがここでは諸侯に集約する。

 

皇帝ー農民、ぐらいの単純な関係から、

皇帝ー諸侯ー農民という関係になっていく。

 

社会構成が複層的になっていく。

 

これは農耕文明の発展、

平和な時代が比較的長く続いたことが要因である。

 

農民が豊かになる、となるとそれを取りまとめる者が出てきて、

その者自体に権力が見につくのである。

 

複層的になり、階層間の対立が少しずつ出てくる。

皇帝の側近である宦官と、官僚の対立は、上層と中間層の対立である。

力を伸ばしているのは中間層と、その下の下位層の農民なので、

相対的に上層の皇帝周辺は力を落とす。

 

上層、中間層、下位層、

この三層の力の差が近づいていく。

 

そうして、世の社会矛盾に対して、

挑戦をしようと下位層の不満が噴出したのが、

黄巾の乱、その後の群雄割拠である。

 

黄巾の乱は、

農民が力を持てなければあり得ないし、

各地の諸侯が力を掌握できなければ、

戦いは起こり得なかった。

 

これらを全てまとめるのに、

再度強いリーダー、すなわち皇帝が求められることとなる。

 

それが曹魏である。

 

●国再度求められる強いリーダー曹魏皇帝、しかし煙たがられる。

 

当初は曹魏の強いリーダーシップは良かったが、

やはり各地の諸侯に嫌われることとなる。

一度得た権力、自由さはやはり手放せないものである。

これが曹魏時代の政治は苛烈だと言われる所以である。

 

各地の諸侯、貴族名族の代表者、司馬懿が皇帝を抑制。

そして、孫の司馬炎が皇帝となる。

 

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●参考図書:

 

中国史〈2〉―三国~唐 (世界歴史大系)

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