拓跋珪の登場。
- ●鮮卑拓跋氏の嫡流。拓跋珪の系譜
- ●匈奴独孤部に匿われる拓跋珪。
- ●拓跋珪、代の復興。すぐに魏と国号を変える。
- ●これまで通り外交政策、拓跋珪は鮮卑慕容部に従属する。
- ●拓跋珪にとっての仇敵、劉顕(匈奴独孤部)と劉衛辰(匈奴鉄弗部)を滅ぼす。
- ●参考図書:
北魏の開祖であり、皇帝となる拓跋珪。
拓跋珪は、
五胡十六国時代最後のメインプレイヤーである。
●鮮卑拓跋氏の嫡流。拓跋珪の系譜
拓跋珪から見ると、
拓跋力微ー拓跋沙漠汗ー拓跋弗ー拓跋鬱律ー拓跋什翼犍ー拓跋寔ー拓跋珪
という系譜である。
衛瓘にはめられ殺された拓跋沙漠汗、上記のように
内乱で死去した拓跋寔以外は、
鮮卑拓跋氏の君主となっている。
(拓跋力微は鮮卑拓跋氏大人、拓跋鬱律、拓跋什翼犍は代王、拓跋珪から北魏皇帝)
拓跋珪は拓跋什翼犍の孫である。
拓跋什翼犍は拓跋弗の孫である。
拓跋弗は296年拓跋禄官により改葬された不遇の君主である。
一年しか在位しなかった人物であり、多分内乱で殺された。
紆余曲折を経て、結局この拓跋弗の系統が、
北魏拓跋氏の嫡流となる。
拓跋什翼犍の父は拓跋鬱律。
外交上孤立策をとって、叔母に殺された人物である。
拓跋什翼犍の子で、拓跋珪の父拓跋寔は
371年に起きた長孫氏の内乱を鎮圧するも、その際の傷がもとで死去。
当時、鮮卑拓跋氏が従属していた前燕が370年に滅び、
前秦が勢力を大きく伸ばしたことによる余波である。
●匈奴独孤部に匿われる拓跋珪。
376年に鮮卑拓跋氏は苻堅により滅亡。
拓跋珪は、匈奴系の名族独孤部の劉庫仁に匿われる。
(隋の楊堅の皇后が独孤氏で有名である。)
劉庫仁の母は拓跋氏(拓跋什翼犍の娘。拓跋珪の叔母)である。
拓跋珪から見ると、劉庫仁は義理の叔父であった。
劉庫仁は苻堅により鮮卑拓跋氏が滅ぼされた後、
鮮卑拓跋氏の旧領の東半分を支配していた。
中華統一するかに見えた前秦苻堅。
しかし、
383年淝水の戦いで、前秦苻堅が東晋に大敗。
これをきっかけに前秦は崩壊していく。
384年に前燕の宗族であった慕容垂が、中山にて自立。
後燕となる。
383年の10月、慕容垂が鄴の苻丕を攻めると、
劉庫仁は援軍に出るが
その際に劉庫仁は戦死する。
劉庫仁の弟、劉眷が後を継ぐ。
この劉眷という人物は拓跋珪を引き続き保護する。
(のちのことだが、拓跋珪が386年に自立すると、
この劉眷の娘を皇后として迎え入れ、
後に拓跋珪の後継者拓跋嗣(のちの明元帝)
を生む。
※北魏の風習で、後継者となると、その母は殺されることになっているので、
拓跋珪が不慮の死を遂げ、後継者争いに勝った明元帝は母を殺すことになった。
「子貴母死」という。外戚の専横を避けるためである。)
しかし、劉眷は兄劉庫仁の子で甥の劉顕が反乱を起こして殺される。
劉顕は、拓跋珪を殺害しようとするも、感づかれ、
拓跋珪は独孤部を出て、賀蘭部へと逃れる。
●拓跋珪、代の復興。すぐに魏と国号を変える。
淝水の戦い後の混戦状態の華北情勢を見て、
拓跋珪は賀蘭部の推戴を受ける形で、
代を現在のウランチャブにて
386年1月に復国させる。
4月に国号を魏に変更する。
拓跋珪は祖父拓跋什翼犍を前秦苻堅に敗死させられている。
拓跋珪は苻堅に対して恩義はなく、むしろ仇敵であった。
自立は、鮮卑拓跋氏の悲願であった。
●これまで通り外交政策、拓跋珪は鮮卑慕容部に従属する。
一方、
苻堅に滅ぼされる前は、
前燕鮮卑慕容部に従属していた鮮卑拓跋氏。
これまでの経緯ということもあり
今回の拓跋珪の自立の際には、
前燕を継ぐ、後燕慕容垂に従属する。
この時点の拓跋珪の支配地域は
フフホトから東のウランチャブまでのエリア。
草原と水の美しいエリアである。遊牧エリアに属する。
●拓跋珪にとっての仇敵、劉顕(匈奴独孤部)と劉衛辰(匈奴鉄弗部)を滅ぼす。
387年6月、拓跋珪は
上記の通り因縁のある、匈奴独孤部の劉顕を滅ぼす。
独孤部は現在でいうと大同市の南西にある朔州市にいた。
拓跋珪はこれで代に進出したことになる。
とはいえ、まだまだ弱小勢力の拓跋珪。
そこを拓跋氏滅亡の原因を作った匈奴鉄弗部の劉衛辰が
攻めてくる。
391年10月、
これに対して拓跋珪は寡兵ながらも撃退し余勢をかって、
匈奴鉄弗部劉衛辰を滅ぼす。
この滅亡を受けて、劉衛辰の子、劉勃勃(のちの赫連勃勃)は
逃亡する。
匈奴鉄弗部はフフホトの先のオルドスを領域としていた。
ここも拓跋珪は獲得する。
さらにこの上記の戦役の間に、
漠北の庫者、柔然も撃破。漠北にまで勢力を伸ばす。
たったの五年で、拓跋珪は鮮卑拓跋氏としての最盛期の勢力圏に
近い範囲を確保したことになる。
しかし急速な勢力拡大の一方で、
外交戦略上拓跋珪は窮地に追い込まれていた。
従属していた慕容垂と手切れとなったのである。
●参考図書:

シナ(チャイナ)とは何か (第4巻) (岡田英弘著作集(全8巻))
- 作者: 岡田英弘
- 出版社/メーカー: 藤原書店
- 発売日: 2014/05/24
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (3件) を見る