歴史マニアのための魏晋南北朝史~歴史の真髄〜中国史・日本史全般拡大中

三国時代から西晋、八王の乱、永嘉の乱、そして東晋と五胡の時代へ。

徙民政策③華北異民族の常套手段へ

徙民政策は、曹操・曹丕に始まり、

石勒が完成させ、その後各王朝に受け継がれる。

 

石虎、前燕、前秦、後燕、後秦、北魏と

数十万人単位の徙民政策を行なって国家体制を固めることとなる。

 

それほど有用な政策であった。

 

初めは孤立を補うための政策。

のちに単純に国力増強のための政策へと変化していく。

 

 

●石虎も族父石勒に習う。

 

徙民政策は、

石勒の次代石虎になっても続く。

 

今度は、石虎自身が皇帝になる前に傘下に収めた、

羌族、氐族を河北へ持って来る。

石虎自身の与力を近くに持っていくということだ。

 

石虎と馬の合う、

羌族姚弋仲(ようよくちゅう)は豊かな清河(せいか)郡、

氐族苻洪は交通の要衝・枋頭(ほうとう)へ、

配置した。

 

・定住志向の低い異民族には徙民政策は受け入れやすかった。

 

なお、姚弋仲は自分から石勒に進言して、

自身が率いる羌族の移住を申し出たという。

 

遊牧や牧畜を生業とする異民族は農耕民の漢族とは異なり、

定住志向が低い。

これも徙民政策が石勒以後の異民族王朝で大規模なものへと変化した要因の

一つである。

 

・自身の与党を集めたい石勒・石虎

 

また、

石勒、石虎は羯の出身と言われているが、

その実態は雑胡である。

大族ではない異民族で名前がつかない。

中華から見た外国人である。

 

石勒は西域の風貌をしていたといわれている。

私はソグド人であると考えているが、

いずれにせよ、石勒・石虎は中華世界のマイノリティなのである。

 

●石勒の出自

 

www.rekishinoshinzui.com

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自身の出身部族というのがない。

羌族とか鮮卑とか、氐族とか、何かで一つにまとまった集団を

代表する人物ではない。

 

いわば、支持団体ないわけで、

特に石勒はまさしく一代の英雄と言える。

 

だからこそ、

徙民政策が彼には必要だった。

出身部族がないのだから、

自分の与党になる者たちをかき集める必要があった。

 

それは自衛手段であり、

石勒を支持する人たちの集まりこそが、

石勒にとっての国家だった。

 

具体的には、

河北の、太行山脈の東麓、襄国、鄴エリアを中心に、

徙民させて、国づくりをする。


だからこそ、このやり方は、
族子の石虎にも受け継がれる。

 

石勒の実子を殺すという非合法なやり方で

石勒の後を継いだ石虎は、

自己防衛の手段として、

羌族姚弋仲と氐族苻洪を配置するのだ。

 

彼らは、

石虎が石勒の命で行った、前趙討伐戦で傘下に収めた族長たちであった。

 

石勒の抱えていた与党を石虎は頼れなかった。

 

石虎は自前の与党が必要である。

だから石虎の与力であり、

自分の手ゴマだからこそ動かしたのである。

 

石勒も石虎の相対的に孤立していたので、

徙民政策を実施したのである。

 


●四面楚歌を跳ね返した前燕鮮卑慕容部は徙民を実施。


さて、次の徙民政策の担い手は鮮卑慕容部の前燕である。

前燕鮮卑慕容部

は親魏晋で栄達もすれば、

四面楚歌にも陥った勢力である。

 

 

司馬懿の遼東征伐に加担することで栄達し、

司馬懿の子孫が西晋皇帝となり、彼らの遼東における地位は盤石。

しかし、西晋が八王の乱で衰退すると、

鮮卑慕容部は孤立。

 

鮮卑慕容部の栄華の陰で割りを食った、

段部、宇文部が慕容部を攻撃してくる。

 

 

鮮卑慕容部対鮮卑段部・匈奴宇文部の

対立はそれぞれ、

東晋、

王浚や後趙がバックにつくことで激化。

 

半世紀に渡る対立となる。

 

結果は、後趙石虎の治世の晩年、

段部を滅ぼし、高句麗を服属させる。

高句麗の民を5万5千人以上、本拠龍城に徙民させ

着実に力をつけていく。

こうして国力を高めた鮮卑慕容部は、

宇文部を滅ぼして、この対立は終わる。

 

鮮卑慕容部は勝ち切ったのだ。

 

しかし、これだけではすまない。


半世紀に渡るこの対立の歴史は、

鮮卑慕容部に、段部、宇文部の存在消滅を決意させるのに十分だった。

 

120万人以上の段部、宇文部の民を、

やはり鮮卑慕容部の本拠龍城に徙すのだ。

 

二度と反抗できないよう、

本拠地から引き離し、奴隷として自分の本拠に強制移住させたのである。

 

この時代、人口の多さは、イコール国力と言っても良かったから、

これで鮮卑慕容部は大いに国勢を発展させたのである。

 

これが後に前燕が河北を一挙に支配する原動力となる。

 

 

●参考図書:

 

スキタイと匈奴 遊牧の文明 (興亡の世界史)

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五胡十六国―中国史上の民族大移動 (東方選書)

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魏晋南北朝 (講談社学術文庫)

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中華の崩壊と拡大(魏晋南北朝)

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